研究課題
特別研究員奨励費
本研究は励起子絶縁体状態(励起子相)の理論を構築することを目的にしている。今年度は励起子相に対する電子-格子相互作用の効果、及び励起子絶縁体状態における電荷・スピン密度の分布を調べた。また、物質に則して、候補物質であるTa2NiSe5における量子干渉効果や超伝導を発現する高圧下における電子構造なども調べた。詳細は以下の1-4に示す。1.励起子相に対する電子-格子相互作用の効果を変分クラスター近似等を用いて調べた。その結果、電子-格子相互作用が働くと、バンド間クーロン相互作用と協力し合いスピン一重項励起子相を安定化させるが、秩序変数の位相が固定してしまい、固体中の基底状態としては励起子凝縮による超流動性などは難くなることを示唆した。2.励起子相のより現実的な実空間的描像を明示すために、局所的な原子軌道を考慮した強束縛近似に基づく電荷・スピン密度分布を評価した。その結果、原子軌道の形状や空間的な配置によって多極子的な秩序やボンド秩序が実現することを示唆した。3.励起子絶縁体の候補物質であるTa2NiSe5の実験結果を理論的に説明するために、有効模型である三本鎖Hubbard模型において様々な物理量の温度依存性を評価した。具体的には励起子秩序状態における超音波吸収率、核磁気共鳴緩和率、比熱や弾性定数の温度依存性を計算し、それらのほとんどが定性的には実験と整合した結果となることを示した。4.超伝導を示すTa2NiSe5の高圧下の結晶構造に対し密度汎関数理論に基づく電子構造計算を実施した。その結果、物性に有効な電子構造は常圧と変わらない擬一次元構造が重要であり、構造相転移後の低温秩序相においても励起子相が実現できることを示した。これら結果は励起子相の消失が超伝導発現に寄与している可能性を示唆している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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