研究実績の概要 |
報告者は、二酸化炭素 (CO2)を一炭素源として用いたα-アミノ酸の新規合成法の開発を目指して研究を行っている。これまでに開発した合成法はカルバニオン様中間体を経由しているため、それらを安定化する芳香環もしくはアルケニル基が基質の窒素原子α位に必要であるという制約があった。そこで報告者は、より基質一般性の高いカルボキシル化反応を開発するべく、アンモニウムイリドに着目し研究に着手した。 検討の結果、α-アミノシランに対し、ヨウ化アリルおよびCsFをCO2雰囲気下で反応させたところ、これまでの報告者らの手法では合成できなかった、窒素原子α位にアルキル基を有するα-アミノ酸誘導体を81%の収率で得ることができた。反応メカニズムについての検証実験により、本反応は 1) 第四級アンモニウム塩の形成、2) アンモニウムイリドのカルボキシル化、3) エステル化4) 2,3-Stevens転位による四工程ワンポット反応であることが示唆された。 本反応はアリルハライドのみならずベンジルハライドも適用可能であり、 1,2-Stevens転位が進行したフェニルアラニン誘導体、または、脱芳香族化を伴う2,3-転位続く芳香族化、すなわちSommelet-Hauser転位が進行したフェニルグリシン誘導体が得られた。 通常α-アミノシランのカルボキシル化は100℃以上の高温条件が必要であるが、アンモニウムイリドを経由することで0℃から室温の条件下カルボキシル化が進行したことは興味深い。生成物は三工程の脱保護を経てα-アミノ酸への変換が可能であった。本反応はいずれも入手容易な試薬から一工程でα-アミノ酸誘導体が合成できることから合成的に有用である。本研究成果はJournal of Organic Chemistry誌に掲載された。
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