本年度は老化細胞由来エクソソームの網羅的解析、生物活性解析、分泌メカニズム解明の目的で以下の通り実施した。 1、老化細胞由来エクソソームの網羅的解析 マイクロRNAについてはマイクロアレイにより、蛋白質についてはMS解析により網羅的に解析した。これらをもとに研究を進め、老化細胞由来エクソソームは継代早期の若い細胞と比較して、エクソソーム1粒子中に含有されるRNA量が増加していること、また、一部のマイクロ即Aの含有量が特異的に増加していることが明らかになった。さらに、これらマイクロRNAの機能等についてはこれまでにほとんど報告がなく、老化細胞由来エクソソームの特異的な機能の存在が示唆された。 2、老化細胞エクソソームの生物活性解析 申請当初は老化細胞由来エクソソームが癌細胞の細胞死を誘導する可能性を検証していたが、その後、エクソソームの添加量等を検討することにより、より詳細な生物活性の解析を目指すことにした。その結果、老化細胞由来エクソソームが癌細胞の増殖能、生存能、浸潤能を抑制することが明らかになった。 3、エクソソーム分泌メカニズム解明 これまでの報告によりエクソソームの生合成や分泌への関与が示唆されている遺伝子Maspin、TSAP6、CHMP4Cに着目し、これらが老化細胞でのエクソソーム分泌に関与している可能性を検証した。まず細胞老化に伴う各遺伝子の発現量を調べると特にMaspin、CHMP4Cで顕著に増加していることが明らかになった。そこでこれら遺伝子をノックダウンしたところエクソソーム分泌量は減少し、一方、過剰発現させるとエクソソーム分泌は増加した。以上より、老化細胞におけるエクソソームの分泌メカニズムとしてMaspin、CHMP4Cが開与していることが明らかになった。
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