研究実績の概要 |
トマトにおけるトマチン生合成について本年度の結果を3つに分けて以下に示す。 1.トマトについて共発現解析を行い、既知の生合成遺伝子と共発現している遺伝子を新たな候補遺伝子として選抜した。 2.組換え酵素を用いたin vitro機能解析により、(i) TCYP4が(22R,25S)、(22S,25R)の2種の22-OH,26-oxo-コレステロール立体異性体の26位にアミノ基転移をすること (ii) TCYP3が(22S,25R)-22-OH,26-NH2-コレステロールを基質とすること (iii) 1.より新たに選抜した26SDRが22,26-diOH-コレステロールの26位をアルデヒドに酸化すること を明らかとした。 3.CSLGをノックダウンさせたトマト毛状根の根抽出物の酸加水分解物はベクターコントロールに比べて内生トマチジンが減少し、コレステロールの蓄積量が増加した。 昨年度までの結果より、トマチン生合成はTCYP1, TCYP2, 2OGD1の順に22R/S位、26位、16α位をそれぞれ水酸化し、16α,22,26-triOH-コレステロールが生合成中間体となると推定していた。それ以降の経路について本年度の結果より、SDR2が26位酸化を、TCYP4がアミノ基転移を担い、TCYP3が機能未知の反応を触媒することが示唆された。また、CSLGはTCYP1の活性を支える機能を有する可能性を見出した。 一方、これまで当研究室で行ったin vitro機能解析により、ヤマノイモ属トゲドコロから22R位、16β位、26位の水酸化を触媒する3種のP450を単離した。基質特異性解析の結果からジオシン生合成に関わる酵素遺伝子のファミリー、酵素活性の立体選択性、反応順序がトマチン生合成とは異なることを強く示唆した。
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