研究概要 |
匂いの定量的な表現は非常に難しいが, 本研究は匂いの脳内表現である匂いクラスタマップを再現するために必要十分な分子情報を計測できるセンサを実現し, センサデータにより匂いクラスタマップを構築することで匂いの測定・表現技術を構築する. そのために, 匂い分子を選択的に透過させることができるMIP吸着剤(MIFA ; molecular imprinted filter adsorbent)を開発した. MIFAの分子選択能力はガスクロマトグラフィにより計測し, 匂いセンサとしての実装はマイクロセラミックヒータと半導体ガスセンサにより行った. また, 8チャネルセンサシステムを構築し, センサシステムにより基本的な匂い物質の分離と計測が可能であることを確認した. さらに, センサシステムの応用目的である人の体臭識別のために, 体臭を構成する脂肪酸類について分離性能を持つMIFAを作成し, その分子識別能力について評価を行った. 匂いクラスタマップによる表現技術については, 嗅球の活性化パターンを解析し, 基本パターンを見出し, 基本パターンに対応する匂い分子の分子パラメータを特定することに成功した. 特定された分子パラメータは物理化学的な分子特性としてセンサにより計測可能である. また, 任意の匂い物質について分子パラメータを基礎情報として生物に近い匂いクラスタマップを再現する事も可能であった. これらの成果により人工匂いマップを出力とするセンサ基盤技術の構築に成功した.
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