研究実績の概要 |
本研究は、「面不斉」を有する遷移金属錯体を触媒的に不斉合成することと、得られる光学活性体の応用研究を目的としている。本年度は、「面不斉(π-アレーン)クロム錯体」、「面不斉メタロセン」の触媒的不斉合成法の開発と応用に取り組んだ。以下に詳細を示す。 (π-アレーン)クロム錯体については、以前報告している(Angewandte Chemie International Edition, 2012年, 51巻, 2951-2955頁)面不斉錯体の応用研究を行った。前述の論文では、「不斉閉環メタセシス反応」を利用して、架橋構造を有する面不斉(π-アレーン)クロム錯体の触媒的不斉合成を達成している。また、得られる光学活性体が不斉配位子として有用であることも報告している。そこで、本年度の研究では、面不斉架橋(π-アレーン)クロム錯体の不斉配位子としての特性を調べた。その結果、ロジウム触媒による1, 4-あるいは1, 2-付加反応、パラジウム触媒によるアリル位アルキル化反応において、非常に有用な配位子として作用することを見出した。また、この錯体はホスフィンーオレフィンで金属中心に配位する不斉二座配位子として、作用していることも明らかにした(the Journal of the American Chemical Society, 2015年, 136巻, 9377-9384頁)。 面不斉メタロセンについては、これまでに報告している手法をさらに拡張し、面不斉ジルコノセンの触媒的不斉合成に取り組んだ。インデニル配位子上に2つのメタリル基とシクロペンタジエニル配位子上に1つのビニル基を有するジルコノセン基質に対して、「不斉閉環メタセシス反応」を行うと、光学活性な面不斉架橋ジルコノセンの触媒的不斉合成が可能であることを見出した。また、得られる光学活性面不斉ジルコノセンが、ZACA反応において不斉触媒能を有することを示した。
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