研究実績の概要 |
3年目にあたる平成27年度では, 設計した部分特異対計算アルゴリズムの中核である, 帯行列の特異値・特異ベクトル(特異対)を計算する並列アルゴリズムの実装と性能評価を中心に研究を行った. 成果物であるソースコードについては, 順次公開している.
1) 帯行列向け2分法と再直交化付きブロック逆反復法による並列特異対計算ソルバの実装および性能評価: 2分法の高い並列性に着目し, 村田によって提案された2重対角化を経由しない手法を現代計算機アーキテクチャ向けに並列実装したものを提案している. 更に, 昨年度までに開発した再直交化付きブロック逆反復法を拡張したものを実装することで, 従来の逆反復法よりも高い並列化効率と大幅な計算時間の削減を実現できることを性能評価によって示した. 以上の成果は,部分特異対計算の既存の枠組みにおける困難を克服するもので,並列プロセス数の増加というスーパーコンピュータのトレンドに即したものと言える.また, 国際ワークショップの招待講演として口頭発表を行い, 成果をまとめた論文を投稿中である.
2) データ再利用性の高い再直交化プロセス計算法の応用および性能評価: 昨年度開発した, 再直交化プロセス計算のためのデータ再利用性の高い並列アルゴリズムの, 大規模疎行列向け特異対計算アルゴリズムへの応用についての研究も継続した. ここで, 開発した並列アルゴリズムの性能は,計算機に搭載されているCPUのキャッシュ容量に依存することがわかっていた.そこで,性能の議論のためのモデル式を構成し,性能予測が可能であることを示した.この性能予測も踏まえた成果をまとめたものについては,査読付き論文誌への採録が決定している.
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