研究課題
特別研究員奨励費
牛海綿状脳症はウシのプリオン病であり、日本及び世界の畜産業の関連産業に大きな打撃を与えた。そのため、牛海綿状脳症の全容解明が望まれている。近年、牛海綿状脳症の感染は、腸管M細胞が異常型プリオンを取り込んで輸送小胞として基底側へトランスサイトーシスを行うことが報告され、M細胞を介して行われることが明らかとなった。しかし、ウシ腸管上皮M細胞におけるプリオン蛋白質取り込みに関わる詳細な研究は行われていない。申請者はプリオン蛋白質取り込みに深く関わる蛋白質としてアルドラーゼAを同定し、アルドラーゼAがプリオン蛋白質と親和性を持ち、異常型プリオン蛋白質取り込み部位で強く発現していることを明らかにしてきた。本研究では、アルドラーゼAに焦点を当て、アルドラーゼAが異常型プリオン蛋白質の感染に関与する蛋白質であることを解明する目的で研究を進めた。アルドラーゼAは、M細胞表面、輸送小胞中、神経線維芽細胞株およびマウスの中枢神経中においても強く発現していることが免疫染色の結果明らかとなった。また、当研究室で樹立したM細胞に分化誘導能を持つマウスおよびウシ腸管上皮細胞をトランズウェルに播種してM細胞に分化誘導させた後にBIE細胞を抗アルドラーゼA抗体で処理し、異常型プリオン蛋白質を添加した。培養9時間後に下部培地を回収し、プロテアーゼK処理後にウェスタンブロット解析を行い、異常型プリオン蛋白質を検出した。その結果、下部培地中の異常型プリオン蛋白質が抗体処理により抑制された。また、人工DNAヌクレアーゼTALENを用いてアルドラーゼAノックアウト細胞を作製し、同様の実験を行った結果、M細胞における異常型プリオン蛋白質の取り込みが抑制された。以上より、M細胞表面に存在するアルドラーゼAを抗体で処理することにより、M細胞における異常型プリオン蛋白質取り込みが抑制されることが判明した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Open journal of Veterinary medicine
巻: 5 号: 03 ページ: 43-60
10.4236/ojvm.2015.53007