研究実績の概要 |
本年度は主に, M2ブレーンを記述すると考えられている3次元超対称共形Chern-Simons理論(ABJM理論)に対して共形対称性を破るような連続パラメータ変形を行うことで得られる理論を解析した. この変形はM2ブレーンがその伸びている方向に垂直な背景フラックス下に置かれている状況を記述すると考えられているが, そのような状況ではMyers効果によりM2ブレーンはフラックスの強さに依存した枚数のM5ブレーンとして振る舞うと考えられている. 従って連続パラメータ変形された超対称Chern-Simons理論における物理量の変形パラメータ依存性を厳密に解析することで, 複数枚のM5ブレーンの理論を理解するための手がかりが得られると期待される.
我々は局所化の手法を用いて径路積分を有限次元積分に帰着させる事により, ラージN極限における自由エネルギーを決定した. 特に変形パラメータを大きくしていくとある点で自由エネルギーが微分不連続に変化している事が判明した. 本結果は重力理論側においても時空構造が質的に変化していることを示唆している.
さらにABJM理論において用いられた分配関数と量子統計系との対応を用いた厳密計算の手法(フェルミガス形式)を変形パラメータが存在する場合にも拡張することに成功した. フェルミガス形式を用いると自由エネルギーに対する1/N補正の定量的な評価が可能となる. ABJM理論やより一般的な3次元超対称共形quiver Chern-Simons理論においてこれらの補正は双対な11次元時空のより非自明な構造を反映していた. 従って変形パラメータが存在する場合や上で発見した相転移点を超えた状況における時空を理解する上でも重要な手がかりを与えると期待される.
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