研究課題
特別研究員奨励費
アデノウイルス(AdV)感染症は、造血幹細胞移植後などの高度な免疫不全状態では致死的となることがある。AdVに対して十分な有効性を有する抗ウイルス剤は現在のところないため、健常人の末梢血中に存在するAdV抗原特異的T細胞を、体外で増幅してAdV感染症の患者に投与するAdV抗原特異的T細胞療法の研究が行われている。健常人の末梢血中のAdV抗原特異的T細胞の頻度は低いため、AdV抗原特異的T細胞療法の実用化には、AdV抗原特異的T細胞を効率よく体外で増幅する方法が必要である。T細胞の活性化には、T細胞受容体を介した抗原特異的な刺激に加えて、共刺激分子を介した刺激も必要であるため、ウイルス抗原特異的T細胞を効率よく体外で増幅するために、共刺激分子を発現する抗原提示細胞を使用することがある。しかし、抗原提示細胞の準備には時間と労力を要する。一方で、共刺激分子に対する抗体(抗CD28抗体や抗4-1BB抗体など)は、必要な時に細胞培養系に添加するだけでいい利点がある。そこで、これらの抗体の有用性について検討したところ、抗4-1BB抗体を用いることにより、抗原提示細胞を使用せずに、簡便かつ効率よく健常人の末梢血単核球からウイルス抗原特異的T細胞を誘導できることが明らかになった。また、AdVのヘキソン蛋白全体をカバーするオーバーラップペプチドプールを用いて、AdV抗原特異的T細胞を誘導する系を確立した。ウイルス蛋白由来の単独のペプチドでは、特定のHLAをもつドナーからしかAdV抗原特異的T細胞を誘導できないが、この系ではHLAの種類に関係なく、AdV抗原特異的T細胞を誘導することができ、汎用性が高い利点がある。これらの研究成果は、AdV以外のウイルス感染症に対する細胞療法にも応用可能であり、造血幹細胞移植後のウイルス感染症に対する細胞療法の実用化に向け、非常に重要な知見が得られた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Immunotherapy
巻: 38(2) 号: 2 ページ: 62-70
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