研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエ上皮において癌抑制遺伝子変異クローンによって引き起こされる細胞競合をモデル系とし、細胞競合を介した上皮の腫瘍成長制御機構の遺伝学的解明を目指し、大規模な"細胞非自律的"遺伝学的スクリーニングの実施し、それにより同定された遺伝子群の解析を行った。癌抑制遺伝子クローンとして極性崩壊細胞(scribble変異細胞 ; 以下scrib変異細胞)をショウジョウバエ成虫眼原基にモザイク状に誘導し、その周囲を取り囲む正常細胞にEMSを用いて変異を誘導し、scrib変異細胞クローンの大きさを評価することで、スクリーニングを行った。今回、我々はscrib変異細胞の排除を抑制する変具体(eld変異体)を4つ単離し、なかでも排除の抑制を強く起こすe/d-4について解析を進め、e/d-4の原因遺伝子をstranded at secopd (sas)と同定した。Sasは正常細胞の上端にのみ存在しており、細胞内ドメインを有さないタンパクであった。そのため、我々はSasがscrib, 変異細胞に発現するタンパクのリガンドとして機能している可能性を考え、Sasレセフニタースクリーニングを行い、レセプター型脱リン酸化酵素であるPtp10Dを同定した。Ptp10Dはレセプター型チロシンキナーゼのキナーゼ活性を負に制御することで、その活性を抑制しているものと考えられた。またscrib勉変異細胞クローンを誘導して、Ptp10D抗体で染色して、その発現を評価すると、scrib変異細胞内で強くPtp10Dが発現していることがわかった。以上より、Sasはserib変異細胞上で発現するPtp10Dのリガンドとして機能することで、scrib変異細胞の排除に関与していることが明らかにした。現在、Sas-Ptp10Dのシグナル伝達経路について、Ptp10Dの器質の司定について解析を引き続き進めている。
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