研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、空間反転対称性の破れた結晶構造を持つCeIrSi_3の重い電子系超伝導の性質に注目して研究を行った。昨年度、我々は、常圧のCeIrSi_3の電気抵抗測定において、試料整形に用いた紙やすりによる研磨等の過程により試料内に生じた僅かなひずみがバルクではない超伝導を誘起する可能性を見出した。今年度は、CeIrSi_3の本質の超伝導特性を調べるために、試料整形後のアニール処理よりひずみの低減を図かり、圧力下電気抵抗測定を行った。電流密度依存性の解析より、およそ1~2 GPa の超伝導は、アニール前に常圧でみられた振る舞いと同様の不均一な状態であった。このことから、電気抵抗率測定で観測される反強磁性相内の超伝導の大部分は、局所的なひずみに起因する可能性が高い。バルクの超伝導の相図からは反強磁性相への超伝導相の入り込みは非常にせまいように見え、超伝導と反強磁性が競合に近い関係にあることを示唆している。このことは、過去に比熱測定を行ったグループの結果を強く支持するものである。本研究より指摘した局所的なひずみが誘起する超伝導は、従来考慮されることがほとんどなかったが、圧力誘起の超伝導体に一般に起こり得る現象であり、電気抵抗測定による相図には、本質ではないひずみによる超伝導の領域を含んでしまう可能性があることを指摘した。CeIrSi_3の横磁気抵抗測定より、常圧および圧力下で、電子構造と磁気構造の変化に対応すると考えられる異常を観測した。これらの異常は磁場ヒステリシスを伴うため、1次相転移であると考えられる。圧力下では、特に2GPa 近傍に急激な抵抗率の減少がみられた。この結果は、過去に報告されたCeIrSi_3のdHvA 測定の特異な圧力変化と対応する。また、磁場誘起の反強磁性と考えられる振る舞いが観測されたため、電子構造の変化は反強磁性相内で起きていると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Physics: Conference Series
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