研究実績の概要 |
オゾン-アルケン反応の初期反応過程で生成されるクリーギー中間体(CI)の幾何異性体(syn体, anti体)を識別する手法を考案した.cis-3-ヘキセン(c3H)とtrans-3-ヘキセン(t3H)のオゾン反応系を対象とし,syn/anti-CIを識別するために,本反応で生成されるアルカン(エタン)の生成収率(Y(RH))とOHラジカルの生成収率(Y(OH))を測定した.実験には国立環境研究所に設置されている光化学スモッグチャンバーを用いた. 本研究で測定されたY(OH)は,c3Hで0.32±0.06, t3Hで0.57±0.07となり,先行値と誤差範囲内で一致した.エタンの生成収率は本研究で初めて測定され,c3Hで0.149±0.015, t3Hで0.097±0.010となり,cis体とtrans体で大きく異なることがわかった.本研究で得られたY(OH)とY(RH)の結果から,(1)syn-C2H5CHOOからはOHラジカルが生成効率1で生成されること,(2)anti-C2H5CHOOからのOHラジカル生成効率は低く,他の反応経路が優勢であること,(3)cis-3-ヘキセンは,anti-C2H5CHOOの生成が優勢であること,(4)trans-3-ヘキセンは,syn-/anti-C2H5CHOO生成比に明瞭な違いはないことが示唆された.さらに,Green Leaf Volatiles (cis-3-ヘキセン-1-オール, cis-3-ヘキセナール)のオゾン反応系での実験結果から,オゾニドの生成(syn/anti-CIの生成比)は,アルケンのcis/trans幾何異性体に支配されることを見出した.
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