研究実績の概要 |
従来の災害時における無人航空機の役割は空撮による情報収集であり, 救援物資の運搬は十分考慮されていない. しかし, 2011年の東日本大震災では, 道路が寸断され車両の到達が困難な場所や建物上層階に被災者が取り残される状況が発生した. この経験から情報収集だけでなく, 物資運搬が可能な無人航空機が必要とされる. しかし, どのような物資がどれだけ必要かは事前には分からず, さらに物資は重心や空力形状を考慮していないため搬送が難しいという問題がある. ケースに入れて運搬する場合でも, ケース内の質量分布は未知であり, 様々な形状のケースに対応する必要がある. この問題に対して, 無人航空機が搬送物の形状や重量を認識し, 臨機応変に搬送を行う制御アルゴリズムを構築することで解決を目指した. これまでに, 搬送物の空力特性を利用した搬送制御アルゴリズムの構築と検証を行った. 搬送物の空力特性が既知のとき, 搬送物の空力特性を利用し効率良く飛行することが可能であることをシミュレーションにより証明している. 平成26年度は飛行アルゴリズムの有効性を実験的に検証することを中心に研究を行った. 構築したアルゴリズムを実機に実装し, 効率的な飛行が行えるかどうかを検証した結果, 搬送物の特性を活かし効率的に飛行することに成功した. また効率的に飛行可能な姿勢へ遷移する課程にも注目し, 安全に飛行姿勢まで遷移させる手法を開発し, 実験により有効性を検証した. 検証の結果, 無人航空機を安全に飛行姿勢へ遷移させることに成功した. これらの成果は雑誌論文へ投稿され, 現在審査を受けている. また搬送中だけでなく空中静止状態においても, 風の方向を推定して風の影響をもっとも受けにくい姿勢へ自動で遷移することが可能であることを, シミュレーションで証明した. 次に物資搬送に特化した機体の研究開発も行った. 従来型の回転翼無人航空機よりも制御出力が多く, 位置と姿勢を完全に独立して制御可能な無人航空機を開発した. この機体は従来機体では侵入できないような狭い空間にも進入し物資を運搬することが可能であることを実験により証明した. そのため災害時の物資運搬などに有効である. この成果はロボット学会で高い評価を受け, 雑誌論文へ推薦され査読中である.
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