研究課題
特別研究員奨励費
社会挫折や孤独から受けるストレスはうつ状態、快感覚の減弱、不安の亢進、注意や記憶力の低下など様々な認知情動変化を引き起こし、うつ病や統合失調症のリスク因子ともなる。一方で、短期的で克服可能なストレスはストレスへの馴化や抵抗性を高めることから、ストレスには適応的な側面も有することが示唆されている。これまで我々は、特にマウスうつ病モデルとされる社会挫折ストレスを用いて、単回のストレスは内側前頭前皮質(medial prefrontal cortex: mPFC)に投射するドパミン系を活性化してストレスによる情動変化を抑制すること、社会挫折ストレスの反復はこのmPFCドパミン系の活性化を抑制し、社会的忌避行動など情動変化を引き起こすことを示した。以上のことから、mPFCドパミン系はストレス抵抗性を高めることが示唆されるが、mPFCでストレス抵抗性を増強するドパミン受容体サブタイプとその作用機序は不明である。本研究では、mPFCドパミン系がストレス抵抗性を増強する作用機序の解析を行った。平成25年度から平成26年度にかけてはドパミン受容体サブタイプの同定とこのドパミン受容体サブタイプの作用を担うmPFCの神経細胞種の特定を行い、mPFCの興奮性神経細胞のD1受容体が社会挫折ストレスへの抵抗性を増強することを見出した。平成27年度はストレス抵抗性でのD1受容体の作用機序を検討した。社会的忌避行動を誘導しない単回の社会挫折ストレスではmPFC浅層の興奮性神経細胞の尖端樹状突起の造成と、この樹状突起でのスパイン増加がD1受容体依存的に誘導されることを見出した。以上の結果から、mPFC興奮性神経細胞のD1受容体は社会挫折ストレスへの抵抗性を増強すること、この過程にはmPFC浅層の興奮性神経細胞での尖端樹状突起の造成とスパイン増加が伴うことが示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Genes to Cells
巻: 18 号: 10 ページ: 873-885
10.1111/gtc.12081