研究実績の概要 |
本研究では、 焼入-分配処理をマルテンサイト系ステンレス鋼に施すことによって残留オーステナイトの生成が可能であることの証明、残留オーステナイトの生成機構の考察、ならびに残留したオーステナイトが及ぼす機械的特性への影響を明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、焼入-分配処理を汎用マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS410(Fe-12Cr-0.1C)に適用すると、約15%の残留オーステナイトを室温まで残存でき、強度-延性バランスを改善できることを明らかにした。また、マルテンサイト系ステンレス鋼中に含まれるCrが焼入‐分配処理により生成する残留オーステナイト体積率に及ぼす影響を定量的に評価した。次に、マルテンサイト系ステンレス鋼の焼入‐分配処理におけるSiの影響についても詳細な調査を行った。また他の研究内容としては、高強度かつ高延性・高靭性な耐食材料を開発することを目標とし、それぞれ炭素と窒素を同程度に単独添加したマルテンサイト系ステンレス鋼(炭素鋼:Fe-0.12C-12Cr,窒素鋼:Fe-0.15N-12Cr)に対して焼入-分配処理を適用し、残留オーステナイトの生成挙動対する炭素と窒素の効果の相違を明らかにしている。
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