研究課題/領域番号 |
13J04682
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
医用システム
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川口 浩和 京都大学, 大学院工学研究科, 特別研究員DC2
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研究期間 (年度) |
2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2013年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 脳波 / 雑音除去 / 信号抽出 / 眼球運動アーティファクト / 事象関連電位 / 脳波律動 / 経験的モード分解 / 多変量解析 |
研究概要 |
・目的 信号対雑音比(SNR)が極めて低い脳波信号に対する雑音成分を除去する、新たな手法の臨床応用へ向けた開発 ・方法・結果 1. 眼球運動アーティファクト(雑音成分)を除去するために、脳を発生源とする信号(所望信号)の損失を極力抑える工夫を施した雑音成分除去法を提案した。頭部を模した球モデルと雑音成分を模した電流ダイポールから計算した模擬脳波に対して提案手法を適用した結果、先行研究と比較して提案手法は同等の雑音除去性能を有するだけでなく、所望成分の損失を有意に抑制できることが定量的に示された。 2. 事象関連電位(ERP)を所望成分、ERPに対する雑音成分として背景脳波(α波とβ波)を設定し、ERPの損失を抑えつつ背景脳波を除去する手法を提案した。球モデルとERPを模した電流ダイポールから計算した模擬脳波に対して提案手法を適用した結果、先行研究と比較して提案手法は多くの背景脳波を除去し、ERP波形を保持できることが定量的に示された。 3. 手首の屈伸運動に基づくα波の変動(ERSIERD)を所望成分、α波以外の脳波律動を雑音成分として、ERS/ERDの高精細な抽出を試みる新たな時間―周波数解析手法を提案した。左手首運動時に被験者から計測した脳波に提案手法を適用した結果、従来の時間―周波数解析手法では捉えることのできなかったα波のERSIERDめ微細な周波数変動を捉えることができた。 ・意義・重要性 脳波解析において、所望成分の損失量の回避を目的として雑音成分除去を試みた先行研究は他になく、本研究((1と2)は先駆的研究として位置づけられる。また、解析で雑音成分除去に伴う所望成分損失に関する問題が軽減されたことは実験時間の短縮に繋がるので、被験者への負担が非常に小さくなる。よって、提案手法は将来的な臨床における脳波計測を用いた診断支援に役立つことが期待される。また、ERS/ERDに対する先駆的な時間―周波数解析手法(3)は、今後の脳機能解析発展への大きな寄与が見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の「研究の目的」で記載した、(1)信号成分の損失をなるべく抑える雑音成分(本研究では眼球運動アーティファグトに着目)除去法の提案、(2)事象関連電位(ERP)に対する雑音成分は背景脳波であるという生理学的知見に基づいた制約を付加した、ERP解析のための背景脳波除去法の提案、(3)雑音成分除去法の定量的な評価手法の提案、を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、雑音成分を除去する手法を提案し、さらに頭部を模した球モデルと電流ダイポールを用いて順問題計算により作成した模擬脳波に対して提案手法を適用することで、その有用性を定量的に確認してきた。しかし、臨床応用を目指すためには、実際の患者(例えば、統合失調症患者)から計測された臨床データに対する提案手法の有用性も検討する必要がある。臨床データは健常者のデータとは性質が異なる可能性があるため、今後は現在までに提案してきた手法を臨床データに適応させることが大きな課題となる。
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