研究課題
特別研究員奨励費
平成26度は、江戸時代に製造されたAg-Cu合金貨幣「豆板銀」及び「丁銀」に施された金属工芸技法である「色揚げ」処理について、(1)色揚げ処理の復元、(2) 色揚げ処理技法における処理条件の検討、(3) 残留応力測定を中心とした「丁銀」の製作技法について検討を行った。得られた結果は以下の通りである。(1) これまでにAg-Cu合金の色揚げ処理については、梅酢の成分であるクエン酸、リンゴ酸によって、処理液中にAg-Cu合金のCuが溶出することで、表面の色彩が白色に変化することを明らかにした。平成26年度は、上記の成分に加え、梅酢中に含まれる塩化ナトリウムについても、Cuの溶出に影響を与えることを明らかにした。(2) 処理温度や処理液の濃度等の色揚げ処理における条件については、文献中に詳しい記述は残されておらず、また処理条件による色揚げ処理への効果についても解明されていない。処理液の温度や、処理時間、色揚げ処理の回数や処理液の濃度を変化させて、Ag-Cu合金について色揚げ処理を行うことで、それぞれの処理条件が、表面に形成されるAg富化層に与える影響を調べた。(3) 丁銀の表裏では、表面構造や腐食による色彩の変化に差が見られる。これは、鋳造時に使用したと推定される「湯床」とよばれる鋳型との接触や、打刻時の残留応力が要因となった可能性が高い。そこで、丁銀について残留応力測定を行うことで、表裏の構造の差が生じる原因について検討を行った。また文献に準じた方法で、丁銀の鋳造及び色揚げ処理を行い、走査型電子顕微鏡による表面構造観察及び残留応力測定を行った。その結果、丁銀の鋳造後に熱処理を行った可能性は低く、また復元丁銀の残留応力測定から、色揚げ処理後に残留応力が緩和することが明らかになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件)
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日本色彩学会誌
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