研究課題
特別研究員奨励費
本研究は温泉が人体へ与える影響(いわゆる「効能」)を科学的に解明することを目的として実施したものである。温泉水を飲用する「飲泉」は日本やヨーロッパで盛んに行われており、中でも炭酸水素塩や硫黄を含む温泉水の飲用は糖尿病の予防・改善効果が報告されている。しかし、これらの有益な効果がもたらされるメカニズムの詳細についてはこれまで明確になっていないことから、本研究では温泉水の飲用が人体に与える影響を詳細に分析した。健康な成人24名の協力を得て、大分県竹田市の長湯温泉から採取した温泉水(マグネシウム・ナトリウム・カルシウム―炭酸水素塩泉)および水道水を用い、4週間に渡る試験を実施した。被験者は1週目と3週目には水道水を、2週目と4週目には温泉水を、1日500 mlを3回(朝食、昼食、夕食のそれぞれ30から60分前)に分けて飲用した。試験開始前および各週末に血液および便を採取して、血液検査やメタボローム解析および腸内細菌叢解析を実施し、個人内における水道水飲用期間と温泉水飲用期間の変化を解析した。その結果、血糖状態を示すマーカーの1種である血中グリコアルブミン値が温泉水飲用後に有意に減少した。また、血液のメタボローム解析の結果、解糖系が亢進した可能性が示唆された。腸内細菌叢解析の結果からは、肥満防止効果があると考えられているChristensenellaceaeと呼ばれる細菌群が、飲泉後に有意に増加することが明らかになった。また、便のメタボローム解析の結果、酪酸などの脂肪酸が飲泉後に有意に増加していた。これらの結果から、本試験で用いた長湯温泉の温泉水の飲用は、解糖系の亢進などの代謝動態の変化や、肥満防止効果がある腸内細菌群の増加などの腸内環境の変化を介して血糖状態を改善する効果を有するのではないかと考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine
巻: 2015 ページ: 824395-824395
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