本研究は、繊毛運動に必要な構造であるダイニン腕の組み立て、繊毛への運搬の分子機構解明を目的としている。当研究室において作製したPcdrp (Primary Ciliary Dyskinesia Related Protein)ホモノックアウトマウスは繊毛内部構造のダイニン腕の著しい減少を示し、繊毛運動が無くなる。 今年度は、得られたPcdrp結合蛋白質の中からMyh10、Myh11がPcdrpに結合していることをウエスタンブロッティングで確認した。さらにPcdrpホモノックアウトマウスでダイニン腕複合体の組み立てが正常に行われているのかどうかを確認した。精巣特異的にCre酵素を発現するNanos3+/Creを用いて、精巣特異的Pcdrpノックアウトマウスを作製し解析に用いた。その結果、精巣特異的Pcdrpノックアウトマウスでは精子運動が無くなるにも関わらず、ダイニン腕の中間鎖であるIC1とIC2の組み立ては野生型と同様に正常である事が確認できた。 Pcdrp結合蛋白質であるミオシンはアクチンを足場として移動するモーター蛋白質である事が知られている。PcdrpがMyh10、Myh11と結合し、ダイニン腕複合体の構成因子であるIC1とIC2の組み立てが 精巣特異的Pcdrpノックアウトマウスで正常であった事から、Pcdrpはダイニン腕複合体形成後、細胞質から繊毛へダイニン腕を運搬する過程において役割を果たしている可能性が示唆された。 現在Myh10、Myh11ノックアウトマウスをCRISPR/CASシステムを用いて作製しており、各ノックアウトマウスのノード、気管、精子運動を確認するために準備を進めている。
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