研究概要 |
プルトニウム(Pu)同位体は、通常、<241>^Puのβ崩壊後の残留核であるアメリシウム241(<241>^Am)と化学分析により分離される。しかし、この方法では時間と手間が掛かり、また、非破壊での分析が行えない。一方、Pu同位体と<241>^Amはα崩壊に伴い、LX線を放射する。本研究はLX線測定を利用したPu同位体の定量管理を目的としている。この方法では分析に正確なLX線放射率の数値が必要である。しかしながら、半導体検出器で測定されたLX線スペクトルでは、各ピークの同定が不十分なため、現在、Pu同位体の分析に必要な精度のLX線放射率の値が得られていない。LX線放射率の評価値を使用してPu同位体の存在比を推定するためには、LX線スペクトルを半値幅50eV程度のエネルギー分解能で計測することが要求される。 実験では、日本原子力研究開発機構において標準型Au吸収体TES型マイクロカロリーメータと有感面積を向上した改良型Au吸収体TES型マイクロカロリーメータを用いて<238>^Pu、<239>^Pu、<241>^Am線源から放射されるLX線のスペクトル計測を行った。標準型を用いた測定では検出事象が最も多い17keVのL_<β1> X線において60eV程度、改良型を用いた測定では35 eV程度の優れたエネルギー分解能で計測することができ、LX線スペクトル計測によるPuとAmの元素弁別の可能性を実証した。 次に計測で得られたスペクトルからLX線放射率の評価を行った。<241>^Amの放射率について他の研究グループから報告されているデータに近い値が得られ、本研究での評価法の妥当性を実証した。しかし、統計精度が不足しており誤差が大きかった。また、Pu同位体について、今回使用した線源はリンパ節を模擬したファントム内に線源が埋め込まれており、線源のファントム構成物質, ファントム内の線源の分布などに関する仕様が入手できないため, 線源内部でのX線の減弱などの補正ができず, 放射率を評価することができなかった。
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