研究概要 |
本課題では、直交集成板(Cross Laminated Timber, 以下CLT)接合部に関わる以下のような一運の研究を実施した。なお, 【1】は昨年から継続した課題, 【2】は新規の課題である。 【1】CLT鋼板挿入ドリフトピン接合部の非線形有限要素解析 本研究では、非線形有限要素解析によって、任意の方向に引張力が与えられたときの、CLTドリフトピン接合部性能を明らかにした。木材では、木材の繊維に直交する方向と繊維に平行する方向で、圧縮や引張に対する剛性や強度が異なる。接合部性能も同様に、繊維角度に依存する傾向にある。CLTでは、木材が互いに直交しながら接着積層されているため、この繊維角度依存性が小さくなる傾向にあると考えられた。その傾向を定量的に把握するため、非線形有限要素解析による荷重変位関係の推定と、接合部引張実験によるその検証を実施した。 【2】CLTと木ねじを用いた接合部の実験 曲げ降伏型接合具を用いた接合部として、【1】で実施したドリフトピン接合部の他に、木ねじを用いた接合部1について検討した。木ねじを用いた接合は、わが国ではホールダウン金物などとして、在来軸組工法等で使用されており、欧州においては、CLTの接合法として主要な接合法である。本研究は地震国における木ねじを用いたCLT接合部を想定し、鋼板添え板木ねじ接合部の引張実験を実施した。木ねじ降伏後の引抜き抵抗によって、木ねじ接合部は抵抗していること、それによって、木ねじ接合部も剛性や強度の繊維角度依存性が小さくなる傾向にあることが明らかとなった。 以上の検討により, ドリフトピン接合および木ねじ接合がCLT接合部とレての有効性、それらの剛性や強度の推定方法、荷重と繊維方向との関係、CLT特有の破壊の傾向等、が明らかとなった。今後の展開として、破壊メカニズムの解明や構造物への応用等が望まれる。
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