研究実績の概要 |
回遊に密接に関わるレプトセファルスからシラスウナギへの変態に着目し、変態の早さに関連する遺伝マーカーの探索のための解析基盤の構築を行った。具体的には、以下の3つの研究を実施した。 (1) 解析材料となる家系の作出:完全養殖第2世代のウナギの中で変態の早かった家系の姉妹交配により作出された家系を解析家系とした。変態が開始した個体は変態日数を記録し、DNA解析用にエタノール中に保存した。以上から、変態日数解析用個体77個体のサンプリングが完了した。 (2) 遺伝マーカーの探索の基盤構築:解析個体からのDNA抽出はQuick geneを用いて行い、遺伝学的解析はGBS(Genotyping by sequencing)解析を適用した。解析の結果、雄親から19,386,060 reads、雌親から24,068,238 reads、子供からは平均3,586,950 readsのデータを取得した。データはCLCにてクオリティチェックおよび制限高所配列のトリミングを行った後、stacksにてアリルを探索した。その結果、742010個のアリルがコールされた。 (3) 育種研究の基盤ツールである親子鑑定系の確立:雌親魚5個体と雄親魚15個体を自然交配させた集団を解析家系とし、日齢2日の153個体と日齢30日の148個体を解析に供した。ヘテロ接合度と多型情報含有値の高い8つのマイクロサテライトマーカーを選定し、マルチプレックスPCR法により全マーカーを同時に増幅させ、多型解析を実施した。計301個体のうち297個体の親子のペアを判別でき、鑑定率は98.7%と高い精度の親子鑑定法を確立できた。 以上の研究を通じて、変態に関する遺伝的解析基盤の構築するとともに、育種に向けた基礎ツールの確立もできた。
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