研究概要 |
ユークリッド空間における制約条件なしの最適化手法の一つである共役勾配法をリーマン多様体ヒに拡張し, 収束性の証明を行った, ユークリッド空間における共役勾配法では, 各反復において次の探索方向として, 最急降下方向と, 前回の探索方向にBを乗じたものの和を用いる. FletcherReevesのβを用いたアルゴリズムの多様体版の大域的収束性を調べるとともに, 収束性を高める工夫を加えた新しいアルゴリズムを提案した. この結果は論文"A new, globally convergent Riemannian conjugate gradient method"にて発表された. また, リーマン多様体上の最適化問題として定式化される具体的な応用問題として, 行列の固有値問題や特異値分解問題を扱った. 具体的には, 固有値問題をグラスマン多様体上の最適化問題として定式化し、その最適化アルゴリズムを導出することで, 固有値分解の新たなアルゴリズムを提案した, この結果は論文"Optimization algorithms on the Grassmann manifold with application to matrix eigenvalue problems"として発表した. また, 特異値分解については, 実行列の場合に2つのシュティーフェル多様体の積からなる多様体上の最適化問題として定式化して議論した研究代表者らの以前の論文を, 複素行列の場合に適用できるよう拡張し, 論文"A complex singular valuei decomposition algorithm based on the Riemannian Newton method"として発表した. 当該年度では多様体上の一般的な最適化問題に対して新たな解法アルゴリズムを導出したり, 具体的な行列の問題に対する新たなアルゴリズムを導出し, 応用的な観点から有意義な成果が得られたと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた, 共役勾配法の多様体上への拡張や, 数値線形代数のいくつかの間題の多様体上の最適化によるアプローチを達成することができた, さらに多数の国際会議や国内学会に参加することで多様な情報収集を行い, 当該研究課題をさらに推進するための話題を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
既に得られたリーマン多様体上の共役勾配法を検討してアルゴリズムの更なる改善や開発を目指すとともに, レイリー商やその他の目的関数のリーマン多様体上での最小化問題に対する解法アルゴリズムを導出することで, 様々な分野への応用を図る. 特に, 経済学やファイナンス理論への応用を視野に入れ, そうした分野の研究者と連携を取りながら本研究課題を推進してゆく.
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