研究課題
特別研究員奨励費
私は肺線維症モデルにおける新たな経気道細胞移入系を確立した(Tsukui et al. Am J Pathol 2015)。ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルの初期において、上皮細胞が欠落した肺胞腔に活性化線維芽細胞が移動している様子が組織学的解析により観察された。そこで私は肺傷害初期に肺胞腔に移動した線維芽細胞がやがて瘢痕を形成すると仮説を立てた。この仮説を確かめるため、ブレオマイシンを投与して肺傷害を誘導した野生型のマウスに、Col-GFPマウスから単離した常在性線維芽細胞を経気道的に移入する実験を行った。ブレオマシン処理後4日~10日の間に経気道移入を行った時に、ホストの肺においてCol-GFP陽性細胞の生着が見られた。生着したCol-GFP陽性細胞をセルソーターにより純化し、遺伝子発現解析を行ったところ、I型コラーゲンやalpha-smooth muscle actin (a-SMA)等の活性化マーカーを顕著に発現していた。移入した細胞の一部は線維化部位で線維芽細胞巣を形成しており、これらはヒトの特発性線維症でみられる線維芽細胞巣とよく似た特徴を持っていた。これらの結果により、経気道移入実験系は、内因性線維芽細胞の活性化の一部を再現し、そのメカニズムの解析に有用であることが明らかになった。この経気道細胞移入系を用い、前年度までに同定方法を確立した常在性線維芽細胞、血管周囲平滑筋細胞、血管周囲細胞、さらに上皮細胞の系譜追跡を行った。常在性線維芽細胞が移入後に活性化線維芽細胞様の形態と線維芽細胞巣の形成を示したのに対し、血管周囲平滑筋細胞、血管周囲細胞、上皮細胞では活性化線維芽細胞への分化は見られなかった。これらの結果から、常在性線維芽細胞が肺線維症における活性化線維芽細胞の主要な起源であることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Plos One
巻: 11 号: 2 ページ: e0148998-e0148998
10.1371/journal.pone.0148998
Am J Pathol
巻: 185 号: 11 ページ: 2939-2948
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The American Journal of Pathology
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BIO Clinica
巻: 11
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20151008-2.pdf