研究課題
特別研究員奨励費
機会の平等の観点から、不確実性下における資源配分の評価の方法を研究した。今年度行った研究では、事前の効率性を非常に弱い形で用いた。効率性を弱める理由は、通常の「事前のパレート原理」は「不平等回避移転原理」という公平性と矛盾する上に、不確実性の下ではそれほど望ましくないことが知られているからである。不確実性下では、各個人にとって意思決定が難しく、事前の選好を尊重することがそれほど強く要請されないと言われている。今年度は、次のような結果を得た。まず、人々が等しいリスクに直面している場合のパレート原理、等しい選好を持つ個人間での格差を減らす資源の移転原理、分離可能性の三つの公理を満たす場合、社会厚生基準は事前のパレートを満たすことになってしまうことを示した。これにより、上記の理由から、不平等回避移転原理を諦めなくてはならなくなる。不平等回避移転は直観的に望ましく思える公平性条件である。よって公平性を重視するならば、分離可能性を弱めるのが一つの方法である。分離可能性を次のように弱めた。平等主義的な社会では、恵まれない個人の状態に関する情報は重要である。そこで、社会的決定から分離できるのは無関心かつ他の個人より恵まれている個人に制限する。このように弱めた分離可能性、不平等回避移転原理、各個人の状態を全員の選好で評価するパレート原理、不確実性回避選好を尊重するパレート原理、の四つの公理を考える。これらの公理から、次のような社会厚生基準を導出した。各個人の状態に関して、全員の選好による確実同値額を計算する。こうして計算した確実同値額の中で、社会における最小値を基準とし、その最小値が大きいほど良い社会状態であると判断するのが、ここでの社会厚生基準である。この社会厚生関数は、事前の公平性を重視することも論じた。また、非対称情報化での最適配分についても考察した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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