配分額 *注記 |
4,320千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 720千円)
2015年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2014年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2013年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究実績の概要 |
平成27年度は,26年度において取得した気候変動下の水文データを用いて将来における水生昆虫の種分布や遺伝的多様性の予測に向けたモデル開発を中心として研究活動を行った.26年度において分布型水文モデルを用いて再現した気候変動下の河川における流速,水深,水温指標を適応的遺伝モデル(Nukazawa et al., 2015)における説明変数として用いて,水生昆虫4種(トビケラ3種,カゲロウ1種)の流域内における対立遺伝子頻度パターンを予測した.対立遺伝子頻度を用いて,各シナリオ(IPCC第5次評価報告書におけるRCP2.6, RCP4.5, RCP8.5),各将来期間(2031~2050, 2081~2100)における遺伝的多様性を予測し,シナリオ・期間毎の遺伝的多様性の変動を評価する枠組みを構築した.また,いくつかのシナリオ・期間における対立遺伝子頻度パターンの差異から遺伝集団(類似した頻度パターンを有する個体群グループ)を定義し,その気候変動条件下における変遷を示した.既往研究では,気候変動に伴い対象種の分布範囲の減少(Range reduction)により個体群が移動せず絶滅すると仮定し,その結果ハプロタイプが消失することにより広域の遺伝的多様性の劣化を表現していた.これは,遺伝子座のほとんどが変異に対して中立であり環境変化による変異を説明できなかったからである.しかし本研究では,環境選択により変異すると定義された遺伝子座(Watanabe et al., 2014)を用いることにより,世界で初めて気候変動による直接的な遺伝子変異を推定する研究となる.本成果はオーストラリアにおける国際学会(11th International Symposium on Ecohydraulics)において発表した.現在,本成果をまとめて国際科学雑誌への投稿準備中である.
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