研究課題
特別研究員奨励費
本年度は代謝物分析の一環として、臓器組織中に残留するポリ塩素化ビフェニル(PCBs)およびそれら水酸化代謝物(OH-PCBs)の包括的な分析法の確立を目指して研究を進めた。定性・定量には高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-HRMS)が用いられているが、コストが高いこと、使用者に高度なスキルが求められること、分析時間が長いことなどの問題がある。このため本研究では安価かつ簡便な四重極型GC-MSを負イオン化学イオン化法(ECNI)を用いて3-8塩素化OH-PCBs異性体を測定することを目的とした。機器検出下限値(IDL)を、GC-ECNI/MSとGC/HRMSで比較した。5-8塩素化OH-PCBsのIDLは2つの分析法で同等の値を示したが、3-4塩素化OH-PCBsはGC/HRMSが1桁高感度であった。生体組織中から検出されるOH-PCBs濃度をGC-ECNI/MSのIDLと比較すると、大半の異性体が検出可能であることが明らかになった。続いて前処理法を改良し、一般的な前処理法と、本研究で改良したアセトニトリル洗浄+5%含水シリカゲルカラムによる前処理法の回収率を比較した。その結果、本研究における3-4塩素化OH-PCBsの回収率は一般的な前処理法である硫酸処理の回収率である2.0-3.5%から82-91%に改善した。5-7塩素化体については、いずれも80%以上の回収率を得ることができた。さらに、分析精度を確認するために添加回収試験を実施した。10pg, 50pgのOH-PCBs27異性体を同一肝臓サンプル2.5gに添加・分析し、回収率を求めた。その結果、回収率は10pg添加時で64.7-117%、50pg添加時で70.4-120%と良好な成績が得られた。本研究成果は国際誌Talantaに投稿し、受理された。
2: おおむね順調に進展している
オミクス研究において重要な代謝物の分析法を確立し、学術誌として投稿できたことから、概ね順調に研究は進展している。ただし、より包括的な生理活性物質の一斉分析法の確率が不可欠であることから、今後も分析法の検討を続ける必要がある。
(抄録なし)
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Talanta
巻: 118 ページ: 253-261
10.1016/j.talanta.2013.10.031
Archives of environmental contamination and toxicology
巻: (in press) 号: 1 ページ: 29-41
10.1007/s00244-014-0021-y
Marine Environmental Research
巻: 93 ページ: 15-22
10.1016/j.marenvres.2013.08.016
http://scholar.google.co.jp/citations?user=in2FIHwAAAAJ&hl=ia
https://www.researchgate.net/profile/AkifumiEguchi?ev=hdr_xprf