研究概要 |
1. 一般化ラムダ分布を含む分位点分布には, 尤度関数が解析的に得られないものが多くある. 尤度関数の評価を回避する近似ベイズ計算法(approximate Bayesian computation, ABC)という手法が注目されてきているが, マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)に基づいたABCによるモデルの推定アルゴリズムは非効率であることが知られていた. そこで本研究では, 従来のアルゴリズムの問題点を克服するために, マルコフ連鎖において複数の次の点の候補を提案するアルゴリズムを提案した. このアルゴリズムは複数の点の中からABCの事後密度の高いものが選ばれやすいようになっている。数値実験によりこのアルゴリズムは従来のアルゴリズムの問題点をすべて克服することが確認された. この研究成果は国際雑誌Journal of Statistical Computation and Simulationにおいて発表された. 2. 分位点は線形オペレータではないので, Oaxaca-Blinder (OB)分解などの適用が不可能であった. 打ち切りのあるデータの位点についてのOB分解を可能にするため, 本研究ではUnconditional quantileregressionの手法をこれらのデータを分析するためのモデルへと拡張を行った. 本研究ではより精確かつ柔軟に被説明変数の密度関数を推定するために, 打切正規分布のディリクレ過程混合モデルを用い, 擬似ベイズ法によってMCMCによる推定を行った. 3. 従来の回帰モデルと同様に, 分位点回帰モデルにおいて内生変数の存在は理論的にも実践的にも重要な問題である. 本研究では, 内生変数が存在するダイナミックパネルデータのための分位点回帰モデルのモデルを構築し, 一連の推測方法の開発を行った. 具体的には, 内生変数への対処するためにLee (2007)に従ってコントロール関数を導入し, ギブスサンプリングによる推測方法を開発した. この研究成果は国際雑誌Cliometricaにおいて発表された.
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