研究実績の概要 |
本年度は①CRMP4の嗅球僧帽細胞の樹状突起伸長への影響、②CRMP4欠損による行動学的影響の2点の解明を試みた。 まず①に関して、マウス嗅球ニューロンの初代培養を行った。培養僧帽細胞の樹状突起長を調べたところ、野生型(WT)マウス由来の僧帽細胞に比べ、Crmp4-ノックアウト(KO)マウス由来の僧帽細胞の方が樹状突起長が有意に長いことが明らかになった。Crmp4-KOマウス由来の僧帽細胞にCRMP4発現ベクターを導入したところ、樹状突起伸長が有意に抑えられた。次にCRMP4の樹状突起伸長抑制機能が嗅球の僧帽細胞に限らず一般的であるかを検証するために、HT22株化細胞を用いた培養実験を行った。Crmp4をノックダウンした細胞ではコントロールに比べ有意にMAP2陽性突起長が長かった。一方Crmp4を過剰発現させた細胞では逆にMAP2陽性突起長がコントロールより短かった。本研究によりCRMP4が樹状突起の伸長に対して抑制的に機能していることが初めて明らかになった。 ②に関してはCrmp4-KOマウスの行動実験を行った。その結果social interactionの有意な低下がCrmp4-KOマウスで見出された。またCrmp4欠損によるsocial interaction低下への影響はメスよりもオスの方が大きいことが示された。更にこの異常に関与しうる遺伝子群の発現を調べたところ、幾つかの遺伝子のmRNA発現レベルがWTマウスよりもCrmp4-KOマウスの方が有意に高い、あるいは低いということも明らかになった。 ①の結果を含めたCrmp4-KOマウスの形態学的解析の結果は、Journal of Anatomy誌に掲載された(Tsutiya et al., 2016 228:792-804)。②の結果は他の解析結果と共に、現在論文として纏めており、まもなく投稿に至る。さらに前年度までに得た結果を纏めた論文が、European Journal of Neuroscience誌に掲載された(Tsutiya et al., 2015 42:2335-45)。
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