研究実績の概要 |
私は今年度,複素ジョルダン代数および複素ジョルダン三重系の理論を用いて,2つの正則離散系列表現の間の絡作用素を具体的に構成する研究を行った. 一般に,G⊃G'を2つのリー群とし,Gの表現Hを部分群G'に制限することを考える.このとき,一般には制限H|_G'は良い振る舞いをするとは限らない.しかし,G,G'がエルミート型,すなわち対応するリーマン対称空間G/K,G'/K'がともに自然な複素構造を持ち,かつ埋め込み写像G'/K'→G/Kが正則で,さらにGの表現Hが正則離散系列表現と呼ばれる良いクラスの表現であると仮定すると,制限H|_G'は離散分解し,さらにその重複度は有限かつ一様有界になる.そこで,H'をG'の表現であって,制限H|_G'の分解に現れるようなものとした時に,H'とH|_G'の間のG'-絡作用素を具体的に構成する問題を考える.ここで,Gがエルミート型のとき,リーマン対称空間G/Kは必ずある複素ジョルダン三重系p+の有界領域Dに微分同相になり,正則離散系列表現はこのD上の正則関数の空間に実現されるので,その研究にジョルダン三重系の理論を用いることができる. 私は今年度の研究で,G,G'が上記の仮定を満たし,HがGの一般の正則離散系列表現のときに,G'の表現H'とGの表現Hの間のG'-絡作用素をまず積分作用素の形で構成した.さらにそれを用いて,Gが古典型の単純リー群で,(G,G')が対称対であり,さらにHとH'がともにスカラー型の正則離散系列表現の場合に,G'の表現H'からGの表現HへのG'-絡作用素を無限解微分作用素の形で具体的に構成した.また,G=G'×G'の形で,G'がGに対角に埋め込まれている場合に,Gのスカラー型の表現HからG'のスカラー型の表現H'へのG'-絡作用素を(有限解)微分作用素の形で具体的に構成した.
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