研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、真核生物の有するN結合型糖鎖プロセシング酵素およびそれと相同性を有する細菌由来機能未知酵素を対象とし、X線結晶構造解析に基づく反応機構の解明および基質特異性に関わるアミノ酸残基の特定、さらにグライコシンターゼ化による有用なオリゴ糖および糖鎖合成酵素を作出することを目的とした。前年度より引き続き、プロセシングα-グルコシダーゼⅠが属する糖質加水分解酵素ファミリー63(GH63)、そしてプロセシングα-グルコシダーゼⅡが属するファミリー31(GH31)の酵素について研究を行い、主に以下の成果を得た。1. 大腸菌由来GH63酵素YgjKは前年度までに二糖2-O-α-グルコシルガラクトースを生成する2種類のグライコシンターゼ変異体(D324NおよびE727A)を得ている。前年度に行った二糖との複合体構造解析に基づき新たな変異体を構築し、糖の合成能を比較した。その結果、GH63酵素の活性部位近傍に保存されているチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体のオリゴ糖合成能が最も高いことがわかった。2. 近年グルコシル-/マンノシル-グリセリン酸加水分解酵素と同定された好熱菌由来GH63酵素(Tt8MGH)のX線結晶構造解析を行った。Tt8MGHのアポ構造、生成物であるグルコースまたはグリセリン酸との複合体構造を1.67-2.10 Å分解能で決定し、Tt8MGHに特徴的な3つのループが基質認識に関与していることがわかった。3. 細菌由来GH31機能未知酵素(PsGal31A)の大腸菌発現系の構築、組換え酵素の性質解析を行ったところ、GH31として初めてα-ガラクトシダーゼ活性を示す酵素であることがわかった。また、X線結晶構造解析によりPsGal31Aの立体構造を明らかにし、本酵素のユニークな基質特異性に関する知見を得た。以上の成果により、GH31およびGH63に属するユニークな基質特異性を有する加水分解酵素を新規なオリゴ糖合成酵素に変換するための基盤を確立した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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