研究実績の概要 |
インドールジテルペンアルカロイド類であるpenitrem Eの合成研究に着手した。本年度では、B-E環部を有する左セグメントの合成経路に改良を加え、論文投稿し、Chemical Communicationsに掲載された。また、鍵反応である(2+2)環化付加反応のさらなる検討を行った結果、TBDPS基のシリルエノールエーテルを用いたところ、ジアステレオ選択性が向上することを見出した。 さらに、ソウル国立大学David Yu-Kai Chen教授との共同研究であるインドールアルカロイドactinophyllic acidの合成研究を行った。Actinophyllic acidは、高度に縮環した骨格を有しているため、全合成は2例のみに留まっている。本年度では1,3-双極子環化付加反応とアリールアミノ化反応を鍵としてactinophyllic acidのラセミ全合成を達成した。トロポンと1,3-ブタジエンとの[6+4]環化付加反応によって導いたビシクロケトンに対し、酸化的開裂とつづく二重還元的アミノ化反応により、メソジエンへと導いた。その後、得られたメソジエンに対して、炭酸水素カリウム存在下、ジブロモオキシムを作用させ、1,3-双極子環化付加反応を行い、グラムスケールでのイソキサゾリンへの変換に成功した。つづいて、イソキサゾールへと酸化後、アリールアミノ化反応の条件に付すことで、ピロリジン骨格の構築とニトロベンゼンの導入を行った。次にアセタールを加水分解した後に、ニトロ基の還元とイソキサゾールのN-O結合の開裂によって、インドール骨格を構築した。最後にテトラヒドロフラン環の構築とメチルエステルの加水分解によってactinophyllic acid塩酸塩を合成した。本合成経路による骨格構築法は高度に縮環した化合物においても適用可能であるため、極めて重要な知見であると言える。
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