これまで、申請者はTET3-OGT複合体の存在を明らかにしていた。平成25年度には、その複合体の意義を含む以下の点を明らかにした。まず、TET3がOGTのクロマチン局在を亢進することを示した。またその作用機序として、TET3が結合するとOGTタンパク質が安定化すること、さらに、OGTのクロマチン局在は全細胞抽出液中に存在するOGT量と強く相関することを示した。すなわち、TET3はOGTとの結合を介して安定化させ、タンパク質量を増加させることでOGTのクロマチン局在量を亢進していることを明らかにした。最近、他の研究グループからもTET-OGT複合体の存在、及び、TETがOGTのクロマチン局在に作用を及ぼしていることが報告されているが、その具体的な作用機序は明らかにされていなかった。本研究では、TBT3がOGTタンパク質の安定化を通してクロマチン局在を促進するという作用仮説を提唱した。これらの研究成果は査読付き国際学術雑誌「Genes to Cells」の紙面上にて発表した(2014年、19巻、52-65項)。 一方、生体内におけるTETの役割は未だに不明瞭な点が多い。そこで、細胞分化、特に間葉系幹細胞を基点とする分化に着目し、TETの機能解析を行った。はじめに、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞分化におけるTET遺伝子の発現変動を解析した。その結果、脂肪細胞分化、及び軟骨細胞分化に付随してTET1、TET2の発現が顕著に増加することを明らかにした。さらに、各細胞のゲノムDNA中の水酸化メチルシトシン含量を解析した結果、やはり、脂肪細胞、軟骨細胞への分化に伴い、それら含量が増加することを明らかにした。これらの結果は、TETによるメチルシトシン酸化反応が生体内の細胞分化に寄与していることを示唆するものであり、特に軟骨細胞に関しては、分化に伴うエピゲノム制御が存在する可能性を新たに見出すことができた。
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