研究概要 |
電位依存性ナトリウムチャネル(NavCh)は興奮性細胞に分布する膜タンパク質であり、活動電位の発生や伝導を担っている。NavChには10種類のサブタイプが存在し、それら各々の機能的な差異や病態との弱連が明らかとなっている。そのため、サブタイプ選択的な阻害剤が生物学的ツールとしてだけでなく、新規創薬リード化合物として注目されている。また、それらサブタイプは天然に存在するNavCh阻害剤であるフグ毒テトロドトキシン(TTX)や貝毒サキシトキシン(STX)の感受性から2つに大別されている。即ち、TTXやSTXによって阻害を受けやすいTTX感受性NavChとTTX抵抗性NavChである。特に、心筋や感覚神経に存在するTTX抵抗性NavChは抗疼痛、抗不整脈の分子標的として注目されているが、選択的なリガンドは存在しない。そこで我々はTTX抵抗性NavChを含む全てのNavChに強力な阻害活性を有するSTX類縁体であるゼテキトキシンAB(ZTX)の構造活性相関研究によりTTX抵抗性NavChに対する阻害活性を残すことでTTX抵抗性NavCh選択的阻害剤を合成することした。 その結果、我々が以前確立したSTX骨格の構築法を応用することで、C11位に四級炭素を含むSTX骨格を構築した。次いでC11位側鎖エステルをニトロンへと変換後、アクリル酸誘導体との1,3-双極子付加環化反応によりZTXが有する架橋ラクタム部に相当するC11位側鎖イソキサゾリジンとC13位アルコールを有する化合物を合成することができた。この際、2つのエステルを有するマロン酸誘導体を用いることで、望む位置選択性で反応が進行することを見出した。それによりZTXの構造活性相関研究の基盤を構築することができた。今後、C13位アルコールのカルボン酸への酸化反応と架橋ラクタム部の合成を行い、ZTXの構造活性相関研究へ展開する。
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