研究課題
特別研究員奨励費
本研究では巨視的力学運動と電子スピン流との相関効果の基礎物理構築を最終到達目標とし、その舞台として流体(液体金属)の運動に着目した研究を実施してきた。本年度研究による主要な成果は、流体運動による電子スピン流生成現象を「スピン流体発電」としてまとめたことである。結果として、本研究は国際有力誌Nature Physicsに掲載された。本年度研究成果の意義は正にこの点である。実験・理論の両面から流体の力学運動による新奇のスピン流生成法を提唱する一つの論文としてまとめたことは、本研究の最終目標であった力学運動-スピン流相関の基礎構築に関する一つの到達点と言える。本年度はこれに加え具体的に以下のような進展を得た。1.基礎方程式の微視モデルの精査. 本研究で導出してきた基礎方程式には流体運動による電子スピンソースとして、渦度に依存した項が現象論的に導入されている。電子スピンの運動方程式に対して、渦度によるBarnett有効磁場まわりの歳差運動を考慮することで、この項の微視的な導出を行った。本導出は理論の共同研究者との議論により行われた。結果として、有効磁場方向への電子スピン緩和と、渦度の横揺らぎが重要な役割を担うことが示唆された。2.スピンホール効果スピン流による流体運動制御実験. 流体運動によるスピン流生成の測定システムを援用することで、Pt管に閉じ込めたHg中に流した電流のスピンホール効果によりスピン流を発生させ、そのスピン流の角運動量緩和を通じて流体を駆動するシステムを開発し、流路両端に接続した液溜めの液面変位差をレーザー変位計で測定する事を通して駆動実験を実施した。前年度測定されていた流体の駆動を示す傾向に関して精査を行い、電位差による表面張力の勾配に依存した流体駆動効果(エレクトロウェッティング効果)が、現在の系では無視できないという結論に至った。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Physics
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