研究概要 |
本研究では, 時間遅延された戻り光を有する半導体レーザを用いたリザボアコンピューティングを実装し, その性能をリアプノフ指数により定量化された複雑性を用いて評価することを目的としている. 研究遂行開始の初年度である本年度の1つ目の目標は, 戻り光を有する半導体レーザにおいて一般化同期を用いたリアプノフ指数の推定手法の提案であった. 本手法は戻り光を有する半導体レーザの一般化同期を用いる手法である. 本手法の有用性を調査するために, 戻り光を有する半導体レーザの時間ダイナミクスを表す数値モデルを用いて, 数値計算により提案手法を用いてリアプノフ指数の算出を行った. 本手法で推定されたリアプノフ指数と, 数値モデルの線形化方程式を用いて得られたリアプノフ指数を比較した数値モデルの線形化方程式を用いることで, より正確なリアプノフ指数を算出することができる比較の結果, 本手法で得られたリアプノフ指数が線形化方程式を用いて得られた結果とほぼ一致し, 数値的に本手法の有用性が示された. 本研究による成果は, 3つの国内学会と1つの国際学会において発表した. 本年度の2つ目の目標は, 時間遅延システムにおいてリアプノフ指数を算出する手法を拡張し, 有限時間リアプノフ指数の算出方法を提案することであった。Farmerの提案した時間遅延システムにおけるリアプノフ指数の算出手法(Farmer, 1982)を拡張し, 有限時間リアプノフ指数を算出する手法を提案した本手法を時間遅延システムであるマッキーグラスモデルに適用し, その有用性を調査したマツキーグラスモデルにおいて, 有限時間およびマッキーグラスモデルの遅延時間を変化させ, 有限時間リアプノフ指数の算出を行った. 有限時間および遅延時間に対する有限時間リアプノフ指数の標準偏差の依存性を調査したところ, 有限時間および遅延時間の増加に対しても標準偏差がべき乗則で減少することが分かったこの時のべき指数の値はほぼ0.5となった. 有限時簡リアプノフ指数の標準偏差が大きいことは, 状態空間の位置により予測不可能性が大きく異なることを意味する. これは予測の限界時間が状態空間の位置により異なることを表す. 本研究において得られた成果はPhysical Review Eに論文として発表した.
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