研究概要 |
本研究では、以下の4点について明らかにすることを目的としている。 1. Sr_2VFeA_sO_<3-δ>および(Fe_2As_2)(Ca_<n+1>(Mg, Ti)_nO_<3n-1>)[n=3,4]の単結晶育成 2. Sr_2VFeAsO_<3-δ>単結晶における磁性と超伝導の関係 3. 鉄系超伝導体における結晶構造と異方性の関係 4. 常伝導状態における異方性 平成25年度は、育成条件を最適化することにより、(Fe_2As_2)(Ca_<n+1>(Mg, Ti)_nO_<3n-1>)[n=4]およびSr_2VFeAsO_<3-δ>(δ=O, O. 25,0. 5,0. 75)の単結晶を育成することに成功した。 Sr_2VFeAsO_<3-δ>単結晶において、磁場中での抵抗率測定および磁化測定を行い、酸素欠損が増大するのに伴い、T_cが低下してδ=0.75で超伝導が消失することを明らかにした。またキュリー温度は酸素欠損に伴い、上昇していくことが分かり、電子相図を決定した。 磁場中抵抗率の角度依存性から異方性を見積もることにより、Ca_5(Mg, Ti)_4Fe_2As_2O_<11>[n=4]単結晶は異方性パラメータΓ~160となり、これまで観測されている鉄系超伝導体の中で最大の値を持つことが明らかにした。また同様に、Sr_2VFeA_sO_3ではΓ~20となり、Ca_5(Mg, Ti)_4Fe_2As_2O_<11>の値よりは小さいが、BaFe_2As_2系やNdFeAsO系より大きいことが明らかになった。そこで、この異方性パラメータと結晶構造との関係を議論することにより、異方性パラメータはブロック層の厚さで見積もり可能であることを見出し、また厚さ一層の類似性を利用して、ブロック層の枚数のみで異方性パラメータの予測が可能であるという新たな一般則を提案した。 さらには、大型な単結晶を育成することができたSr_2VFeAsO_3において、四端子法を用いることでc軸方向の抵抗率を測定することにも成功し、常伝導状態における異方性を抵抗率の比から見積もると、T_c直上において、超伝導状態の異方性と一致することが明らかになった。
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