研究概要 |
私たちが生活する実環境でロボットが活動するには, 人や物体と安全に接触できる必要がある. 特に外乱や, 撃力を受ける場合の動作制御は重要である. そこで, 申請者は実環境に適応して活動していると考えられる人の構造に着目し, 筋のように出力の粘弾性を制御できるリニアアクチュエータによる冗長な筋骨格構造を持つロボットの研究・開発を行ってきた. しかし, 多自由度ロボットにおいて, 各アクチュエータの弾性だけでなく粘性を制御することは容易ではない. 本研究では, 筋の共収縮により実現される粘弾性に幾つかの組(シナジー)を考えることができ, 粘弾性の調整はタスクに応じてその組を学習することで実現できるという仮説を立てる. タスク遂行時の人の筋の活性度から, 粘弾性調整のレベルでのシナジーを抽出できれば, 筋骨格ロボットにおいても, 粘弾性のパラメータ空間の低次元化と制御戦略の単純化が期待できる. 本年度は, 外乱に対する筋活動の変化を調べるとともに, 制御対象である人型ロボットに用いるリニアバーニアモータを改良した. 外乱に対する筋活動の変化を調べるため, 腱への振動刺激により生じる運動錯覚を利用した, 小型振動モータを用いた振動子と制御システムを作成し, 一定の振動数の振動を肘と足首の腱に与え, その時の周辺の筋の筋電位を計測した. 個人差が大きかったが, 振動に対して筋電位が変化する様子が観察された. リニアバーニアモータの改良では, シミュレーション結果と比較して実機の推力が低下する問題の解決を試みた. 事前に実機の推力を精度よく計算できれば, 開発期間の短縮が可能となる. 可動子・固定子間のエアギャップの拡大と可動子の加工による透磁率の変化が原因であると考え, 解析モデルを修正して結果を比較するとともに, 加工後に焼鈍処理を施した可動子を用いて推力を計測した, その結果, エアギャップの変化が推力低下に大きく寄与することが明らかになった.
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