運動時の疲労を低減させるためには、骨格筋グリコーゲン濃度を高めた状態で運動に臨むこと、脂質をエネルギー源として酸化利用する能力を高めること、この2つを両立させることが重要となる。脂質をエネルギー源として酸化利用する能力を高める方法として、高脂肪食摂取の有用性が示されている。しかし、高脂肪食摂取が骨格筋でのグリコーゲン合成能力に与える影響についてはほとんど解明されていない。本研究では、高脂肪食摂取が運動後のグリコーゲン合成に与える影響を解明し、骨格筋グリコーゲン濃度の上昇と脂質代謝能力の向上の両立を図る上で、最適な栄養摂取条件を明らかとすることを目的とする。本年度は、雄性のICRマウスを用いて、3日間高脂肪飼料(総カロリー中20%が炭水化物、57%が脂質)を摂取した群(HFD群)とMF飼料(総カロリー中60%が炭水化物、13%が脂質)を摂取した群(MF群)に走行運動を行わせ後、グルコースを経口投与し、回復期の骨格筋グリコーゲン濃度の変化に与える影響を検討した。また、ウェスタンブロット法により骨格筋でグルコースの取り込みやグリコーゲン合成に関わるタンパク質の量を定量化した。その結果、運動後の回復期の骨格筋グリコーゲン濃度について、HFD群ではMF群と比較して有意に低値を示した。またHFD群ではMF群と比較して、運動後の回復期の血中グルコース濃度が有意に高値を示し、骨格筋を中心とした組織でのグルコースの取り込みが低下していることが示唆された。一方、骨格筋でグルコースの取り込みやグリコーゲン合成に関わるシグナル伝達経路上のタンパク質について、活性の指標となるリン酸化型タンパク質量に群間差はみられなかった。3日間の高脂肪食摂取は、シグナル伝達経路には影響を与えないものの、運動後の骨格筋でのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成を抑制することが示唆された。
|