研究実績の概要 |
平成26年度は, 前年度中に協力を得られた母子の追跡調査を実施し, 生後18ヶ月および24ヶ月時点で, 対象児の向社会性を測定するのが主たる目的であった. しかし研究協力者の確保が当初の想定以上に難航したこと, また夏季と冬季においては対象児が感染症(手足口病, RSウィルス等)に罹ることで本来予定していた時点での調査が延期となるなどの事態が重なったため, 研究期間終了までに当初の計画通りにデータ収集を完了させることが事実上不可能となった. このため, 当初の計画を前倒しし, 生後20ヶ月時点において対象児の共感性および対人援助傾向を実験的観察手法で測定することとした. これにより, 生後5ヶ月, 8ヶ月, 14ヶ月, 20ヶ月の総計4時点分の縦断データの収集が完了した. サンプルサイズは第1時点で40組(女児21, 男児19)を確保し, 最終的に37組(女児19, 男児18)となった. データ収集と並行し, 次の3点について分析を行った. ①前言語期乳児の泣きやむずかりに対する母親の応答における個人差と母親のアタッチメントスタイル等との関連, ②母親の調律的応答を支える認知的プロセスとしての対乳児心的帰属傾向の検証, ③歩行開始期幼児の逸脱行動に対する母親の応答における個人差と母親のアタッチメントスタイル等との関連. 上記研究成果①~③は国内外の学術大会でポスター形式にて発表するとともに, 一連の研究成果を俯瞰する形で, 講演会で話題提供を行った. 今後は, 第4時点(生後20ヶ月)で得られた対象児の向社会性の個人差が, 第1~3時点における関連諸変数(母親のアタッチメントスタイル, 子どもについてのワーキングモデル, 母親のMM, 乳児の気質, 母親による調律的応答)といかなる関連性を持つのかを検討する予定である.
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