研究概要 |
初年度である25年度では, 主に「1. 因子が不均一分散を持つ場合における高次元因子モデルの最小距離推定量の漸近特性の考察」及び「2. 高次元因子モデルにおける因子負荷量の構造変化に関する新しい検定方法の提案」に関する研究を行った. 当初はより広い高次元線形回帰モデルを研究対象とする予定であったが, 高次元因子モデルに対するニーズが実証研究で近年急速に高まっていることに加え高次元因子モデルの統計的推測問題ついて理論的に解決されるべきトピックが多数残されていることを知り, 25年度においては高次元線形回帰モデルの特殊ケースである高次元因子モデルに焦点を当てて研究するに至った. 1.では真の因子が不均一分散を持つ高次元因子モデルにおいてローテーションされた因子の推定値とローテーション行列の推定値を用いて真の因子を推定する方法を提案し, この方法の妥当性を保証するため推定するパラメータ数が非常に大きい状況下での最小距離推定量の漸近特性を理論的に考察した. その結果不均一分散性を仮定した高次元因子モデルにおいてローテーション行列の最小距離推定量が一致性を持つことを厳密に証明することができた. 2.は山本庸平氏との共同研究であり, 高次元因子モデルにおける因子負荷量の構造変化に関する新しい検定を提案したものである. 高次元因子モデルにおける特定の系列の因子負荷量の構造変化を検定する方法としてBreitung and Eickmeier (2011)の方法が最も有名であるが, 2. では彼らの検定はマグニチュードが大きい共通時点の因子負荷量の構造変化を想定する場合には識別問題により検出力が単調とならないことを示した上で, この問題を解決できる新しい検定方法を提案した. 1.2.の研究成果は双方とも25年度中に欧文学術雑誌に投稿済みであることに加え其々シンポジウム報告及びディスカッションペーパーとして公表された.
|