研究課題
特別研究員奨励費
本年度の研究では、昨年度作製および測定を開始した試料の測定を継続して行った。スピンブロッケードおよびゲート電圧パルスによるスピン状態の初期化、測定(ポンプ・プローブ法)によって、1スピン操作に相当する単一電子スピン共鳴を確認した。得られたスピン共鳴信号中には、従来のGaAs系量子ドットでは見られない、反交差構造が得られた。これは、歪みSi系の2重バレー縮退(量子ドット中では閉じ込めのためわずかに縮退が解けている。)に起因するもので、バレー励起エネルギーと、スピンのゼーマンエネルギーが等しいときにスピンおよびバレー励起状態が混成することに相当する。続いて、本研究の中心テーマである高性能なスピン量子ビットの実装に相当する、電子スピン共鳴の時間分解測定(Rabi振動)および、Ramsey干渉によるコヒーレンス評価の実験を行った。本測定では、電子スピンの読み出しは各量子ドットに結合した電極を用いたenergy selective readoutを用いて、左右各量子ドットに対して独立に行った。左右どちらのドットに対しても、Rabi振動の観測に成功し、現在のSi系量子ドットにおける報告例の中では最高のRabi周波数(=単一量子ビットの操作速度)を得た。Ramsey干渉によるコヒーレンス評価では、各量子ドットについて、2μs程度のT2*(集団横位相緩和時間)を得た。この値は、従来のGaAs系量子ドットの100倍程度の値となっており、Si系で核スピンの影響が大きく低減されたことを示す。これらの値(Rabi周波数およびT2*)は、位相緩和のみを考慮した単一量子ビット操作の忠実度としては、99.9%以上に相当し、従来のGaAs系で実現された最高値(96.6%)と比較すると、スピン量子ビットの性能が大きく向上したことがわかる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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JPS Conf. Proc.
巻: 1 ページ: 012030-012030
10.7566/jpscp.1.012030
Journal of Applied Physics
巻: 115 号: 20 ページ: 203709-203709
10.1063/1.4878979
巻: 1
http://meso.t.u-tokyo.ac.jp
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