研究課題
特別研究員奨励費
昨年度までにピリジン環とフェノール環がアセチレンを介して交互に連結したオリゴマーが疎水性溶媒中で高い糖との会合能を示すことを報告した。また、このオリゴマーは天然の糖の固液抽出や液膜輸送を行うことができ、その際にマンノースに対する高い選択性が見られた。しかし、その液膜輸送における糖の輸送速度は非常に遅かった。これは水分子により、オリゴマーと糖との会合が阻害されたためただと考えられた。そこで本年度は水中での糖認識について調査し、水分子の水素結合の阻害に勝る会合を探索した。薗頭反応等を利用して合成した両親媒性のオリゴマーの水中での糖認識能評価を行なったところ、このオリゴマーはグルコースのような糖は会合できず、2位にアミノ基を有するグルコサミンと強く会合できることが示された。このことから、以前に開発した疎水性オリゴマーを用いた固液抽出実験でも、グルコサミンに対する高い選択性が見られる可能性があると考え、マンノースとグルコサミンの固液抽出の競合実験を行なった。その結果、この競合実験ではマンノースに対する高い選択性が見られた。これは、グルコサミンの極性がマンノースと比較して高いために、有機溶媒中へと固液抽出されにくかったためだと考えられる。これらの結果から、化合物選択的な人工チャネルとして働くホストには、水中で高い糖認識能を示すだけだはなく、脂質二重膜中で安定な会合体を形成できる必要があると分かった。水中での高い糖認識能を実現するには、疎水性相互作用などが有効に働く分子設計が必要となると考えられる。また糖に対する選択性を上げるには、ホストの高次構造の自由度が小さくする必要であると思われる。今回の研究成果では、これらの点を改善したホストであれば、実用的な糖の選択的な分離に利用できるという可能性を示すことができた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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