本研究の目的はヒッグスセクターの研究によって大統一模型を加速器実験で検証することである。大統一模型の典型的なエネルギースケールは加速器実験で検証が出来る電弱スケールと比べて大きい事から、デカップリング定理が働いて、その模型の検証が困難であることが知られている。 昨年度は細谷機構を伴った超対称大統一模型の低エネルギー有効理論のヒッグスセクターに注目し、その詳細について研究をおこなった。この模型の低エネルギー有効理論のヒッグスセクターは超対称最小模型(MSSM)のヒッグスセクターにSU(2)三重項、一重項が加わった形を成している。国際線形加速器(ILC)による新粒子の探索、結合定数の精密測定を組み合わせることで他の超対称模型と区別可能であることを示した。 今年度は超対称性を持つ模型のヒッグス結合の性質を調べるため、もっとも単純な超対称模型のMSSMについて研究した。MSSMのヒッグス-ボトム結合はループ補正によって修正されツリーレベルのヒッグスーボトム結合とは異なる。重いヒッグスボソン質量が小さい場合、超対称性の破れのスケールがループ補正をより強くする。しかし、重いヒッグスボソン質量が大きい場合そのループ補正は無視できる。また一方でヒッグスーボトム結合はヒッグスボソンの混合角tanβに比例する。既知のILCのヒッグス結合の測定精度を使用することで、ループレベルでヒッグスーボトム結合を計算、ILCの間接測定の探索範囲を調べた。その結果ILCの間接測定は大型ハドロン衝突型加速器実験の直接観測の限界より広い領域を探索できることが判明した。またそのなかで重いヒッグスボソン質量の測定可能領域はツリーレベルと比べ著しく拡張されることを示した。
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