金融市場の不安定性、とりわけ株式市場における価格の変動性(ボラティリティ)について研究している。私は、投資家の異質性が資産価格のボラティリティの統計的性質に対して与える効果を分析した。ここでの異質性は、東京証券取引所における外国人投資家と国内投資家の取引行動の違いである。具体的に言えば、外国人投資家は価格が上昇するときに株式を買い、逆に国内投資家は価格が下落するときに株式を買う傾向がある。最初に、この非対称性が「異次元の金融緩和」のような金融政策のアナウンスメントがあった時期に大きくなることを確かめた。 外国人投資家は、国内投資家に比べてファンダメンタルズに関する情報について不正確な情報を持っていることが想定される。この場合、外国人投資家は資産価格の変動を大きくすること、すなわちボラティリティを大きくすることが理論的に予測される。他方、先行研究によると、株式などの資産価格が上昇するとき、そのボラティリティが小さくなることが観察されている(Asymmetric Volatility)。したがって、価格が上昇しているとき、外国人投資家の買い行動によってボラティリティの上昇が予測される一方で、実際にボラティリティは減少傾向にある。私はこの非対称性を実証的に分析した。外国人投資家の売買行動はボラティリティを上昇させる傾向を持つ。他方、国内投資家の売買行動はそのボラティリティを抑制する方向に働く。価格が上昇しているとき、ボラティティを抑制する効果が大きいが、価格が下落しているときは、ボラティリティを増幅させる効果が大きくなる。したがって、実際に観測されるような、株価変動とボラティリティとの間の負の相関関係が生じることが分かった。
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