研究課題
特別研究員奨励費
【背景・目的】コリバクチンは大腸菌IHE3034株が哺乳類細胞に感染した後、哺乳類細胞からの何らかのシグナル物質により誘導される化合物であると予測されている。従って、本化合物の単離は困難であり、未だ部分構造ですら明らかにされていない。一方、大腸がん発症患者の66.7 %から本菌が検出されている。そこで、本化合物の正体を有機化学的に明らかにし、大腸がん形成メカニズムの解明および予防のためのバイオマーカーとすることを目的として研究に着手した。【方法・結果】我々はコリバクチン生合成に必要とされるclbA~clbQの各遺伝子を発現し、in vitro反応による生合成経路の再構築を試みた。これまで、ペプチド合成酵素 (nonribosomal peptide synthase, NRPS) であるClbNより生合成が開始され、次にNRPSとポリケタイド合成酵素 (PKS) 複合体であるClbBへ受け渡されることが報告されていた。そこでClbN、ClbBの発現ベクターを作製し、これを用い大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体の代謝産物をLC-MSに供した結果、ミリスチン酸、D-AsnおよびL-Ala縮合体の生成が観測された。本化合物はClbNとClbBのNRPSにより生合成されるものと予測され、ClbB のPKSによる代謝産物を確認することはできなかった。これはClbBのC末端にチオエステラーゼは存在せず、生合成中間体が切り出されなかったためと考えられた。そこで化学合成した推定生合成中間体を標品とし、ClbNとClbBの生合成産物を解析した。その結果、ClbNはN-myristoyl-D-asparagine (1) を生産していることが明らかとなった。次に、本化合物をClbBと反応させたところ、ClbB代謝産物は1とL-Alaおよびマロン酸縮合体 (2) であることが特定された。続いて、2を基質に遺伝子クラスター内の各PKSと反応させたところ、新規代謝産物中間体を見いだすことに成功した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www015.upp.so-net.ne.jp/kenji55-lab/index.html