研究実績の概要 |
本研究の目的は、植物の葉緑体におけるバクテリア型シグナル因子ppGppの機能的役割を生化学的・分子生物学的手法を用いることで分子レベルまで明快に理解することにある。これまでにppGppシグナルの標的分子の一つが、葉緑体の翻訳系であることを筆頭著者として学術論文誌に報告済みである (Nomura et al. Plant Mol Biol, 78, 185-196, 2012)。さらに、2014年4月に、葉緑体の核酸制御におけるppGppの役割についての解析結果をまとめ上げ、Journal of Biological Chemistry誌およびBioscience, Biotechnology, and Biochemistry誌に筆頭著者論文を報告することができた。これまでにも、日本植物生理学会や日本農芸化学会の年会および支部会にて研究の進捗を多数報告してきたが、今年度はこれらの研究成果を総括したポスター発表を7月に神戸大学で開催された第3回マトリョーシカ型生物学研究会で行った。 今年度は、上記の筆頭著者論文で、植物葉緑体のppGpp主要標的として示したグアニル酸キナーゼのppGpp感受性を植物界からシアノバクテリアを含むバクテリア界にまで広げ網羅的に解析し、その分布を調査するとともに、ppGpp感受性を決めるアミノ酸残基候補を絞り込み、ppGppシグナル系の進化的経緯を考察することにした。既に、種々のグアニル酸キナーゼのppGpp感受性について調査を終え、酵素反応速度パラメーターの算出など生化学的な解析を終えており、学術論文を執筆中である。
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