研究概要 |
デコイ核酸は、転写因子などDNA結合タンパク質の認識配列に見せかけ、本来結合すべきDNAとの結合を阻害する。これらデコイ核酸を活用することにより、特定の転写因子によって支配されていた複数の遺伝子発現を一挙に制御することが可能となり、遺伝子ネットワークの解明の突破口になることが期待できる。我々はこれまでに天然核酸の糖部を「望ましい形に固定化する」ことにより一本鎖RNAや二重鎖DNAそれぞれに対して強固な二重鎖、三重鎖を形成するアンチセンス法、アンチジーン法に使用可能な2',4'-BNAの合成に成功している。さらに2',4'-BNAは一本鎖DNAとも強固に結合することからデコイ核酸として機能することが予想される。2',4'-BNAの糖部はN型であり2',4'-BNAを含むオリゴヌクレオチド(ODN)はRNA型に近づくと予想される。そこで糖部をより「望ましい形に固定化する」ことを目指し二重鎖DNAが持つS型に糖部を固定化したヌクレオシド類縁体の合成を目指し研究を進め、以下のような興味深い結果を得ることができた。 [1]S型に糖部コンホメーションを固定化した新規核酸類縁体3'-amino-2'-deoxy-3',4'-BNAの合成に成功した。 [2]3'-amino-2'-deoxy-3',4'-BNAを導入したODNがS-オリゴ以上の非常に優れた酵素耐性を持つことを明らかにした。また、その二重鎖はCDスペクトル解析の結果からDNA型に近く、転写因子の結合に有利であると考えられた。 [3]2',4'-BNAを組み込んだBNA-decoyがS-オリゴの様な非特異的な遺伝子発現抑制を示さない優れたデコイ分子であることを示した。 今後、3'-amino-2'-deoxy-3',4'-BNAを導入したODN類のデコイ分子としての機能評価を推進していく予定である。
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