研究概要 |
細胞死の実行過程に関与する細胞死スイッチ担当遺伝子群を同定するために、申請者はショウジョウバエを用いた『異所発現トラップ法』を導入している。これはショウジョウバエ個体内で未知遺伝子を強制発現させる方法であり(Toba et al.,Genetics,1999)、強制発現の結果引き起こされる様々なショウジョウバエの表現型をもとに、機龍的に遺伝子をスクリーニングすることが出来る優れた手法である。申請者はこの異所発現トラップ法を用いて、ショウジョウバエ組織に未知遺伝子群を強制発現させることにより、新規の細胞死スイッチ担当遺伝子群の同定を試みた。GS系統のショウジョウバエを、複眼特異的にGAL4タンパク質を発現するGMR-GAL4系統と交配させ、次世代の子孫の複眼の表現型を観察する。ショウジョウバエの複眼は光受容細胞などの神経細胞を多数含む代表的な中枢神経系器官である。もし複眼に細胞死実行遺伝子が強制発現されれば、複眼はそのサイズが縮小することが申請者らによって既に示されている(Kanuka et al.,PNAS,1999)。さらに、細胞死誘導能が高い場合はしばしば致死になる。これらの事実をもとに、複眼の縮小およびlethalityを指標に細胞死を誘導可能なUAS異所発現トラップ系統をピックアップし、細胞死スイッチ担当遺伝子群の1次コレクション系統を作成し現在までに、5000系統のスクリーニングが終了している。このスクリーニングによって無脊椎動物では初めて、TNFファミリー分子Eigerを同定した(Igaki et al.,EMBO J.,2002)。
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